伊豆食べる通信 2024年01月号

「太刀魚」

沼津港は静岡県東部の観光地として年間165万人以上が訪れる。その中心にある沼津市場は駿河湾で漁獲された鮮魚を全国に出荷しており、早朝から多くの買い手で賑わっている。沼津港の南に位置する沼津市我入道は、古くから漁業と水運の拠点として栄えた地域で、現在もノスタルジックな漁村の雰囲気を残している。

今回取材を協力いただいたのは、我入道漁協所属で「第八光明丸」の後藤光明さん。後藤さんは我入道出身で、代々漁師の家系に育ち、漁師歴30年以上、太刀魚一本釣り漁師としても10年以上の経験を持つ熟練の漁師である。

太刀魚は夜行性で、昼間は深水の深いところに生息し、夕方から夜にかけて浅場に集まる小魚を狙う。駿河湾はまさに太刀魚が好む豊富な餌と環境があり、特に冬場には脂の乗った美味しい太刀魚が水揚げされる。太刀魚一本釣り漁は餌の準備をした後に夕方に出港し、漁場に着くと集魚灯を点けて錨を降ろし、大きな竿を前後に2本張り出す。その竿にはそれぞれ、8〜10本の針が付いており、鯖の切り身などの餌をにつけ、1本1本太刀魚を釣りあげていく。この方法は太刀魚の体に傷を付けず、鏡のように美しい状態で市場に出せるのが最大のメリットだ。

後藤さんは、限られた船上スペースでの効率的な道具配置と、60mの釣り糸を手で手繰り寄せる流麗な動作が特徴。また、周囲の変化に敏感に対応し、風向きや潮の流れに応じて船の位置を微調整するなど抜群の適応力で、最大の釣果をもたらしている。勝負師であることを突き詰め、日々自然と向き合い漁師としての技と勘を磨き続けている。

現在、我入道漁協で活動する太刀魚漁師は5人もおらず、後継者不足が深刻な問題となっている。後藤さんは自分の技術を後進に伝えることに力を入れ、他のエリアからも多くの若手漁師が彼の技術を学びに来ている。一本釣り漁の伝統と後藤さんの技術が受け継がれ、次世代に続くことを願っている。

我入道漁協の太刀魚を買いたい、食べたい

協力:我入道漁協直営 市場めし食堂

沼津港入り口よりすぐ西側にあるのが、我入道漁協直売所。

我入道で水揚げした太刀魚をはじめとした水産加工品の直売所と週末に開店している食堂「市場めし食堂」があります。
今回この通信で送った「太刀魚の醤油干し」もこの直売所で捌いて天日干ししたものになります。

「市場めし食堂」は、まさに太刀魚づくしの食堂。太刀魚を知り尽くした我入道漁協だから提供できる豊富なメニュー。お刺身、フライ、かば焼きなど、丼や定食など我入道の太刀魚を思う存分楽しめる食堂です。

住所:〒410-0845 静岡県沼津市千本港町128-1
電話:055-963-2833
URL:https://www.ngg.or.jp/

営業日:
市場めし食堂
 :土曜日・日曜日・祭日 営業
 11時~15時(ラストオーダー14時30分)
直売所 営業日
 :月、火、木、金 10時~16時
 :土、日 9時~16時
定休日:水曜日